僕らはリアルに生きている、と確信を持って言えるだろ うか。いま自分は生きている!と実感できる瞬間がどれだけあるだろうか。

僕は20代の頃、離人症ぽいところがあった。何をしていてもリアルな感じがしない。 世界と自分との間に薄い膜があるような、自分が主人公のお芝居を同時に自分が客席から眺めているような、そんな感じ。手応えのなさ、空虚感。何かにうちこんだり、身の毛がよだつほど感動したりできない。「本当に僕は生きているのか?すべては夢なのでは?」という漠 然とした不安。これはつらかった。当時はバブル前夜で景気が良かったのだけれど、誰もがカッコつけて「明るい」人を演じてた空々しい時代だった。

今考えればわかる。「よい子」のレールに乗ったまま主体的に生きていなかった、感情や身体的エネル ギーを抑圧していた、土や生命に触れていなかった、メディアを通した疑似体験ばかりで生の体験を欠いていた。要するに不自然に生きていたのだ。だけどそういうことって、今のこの社会に生まれ育ったら誰にでも多かれ少なかれあてはまることじゃないだろうか。

今ここで、充実してリアルに生きる。どんな動物でもやっているそんな当然のことができなくなっているのが、ヒトという動物だ。最近話題の「マインドフルネス瞑想」というのも、つまりは「今ここに生きる」ためのアプローチだ。